ぽんまるスタジオ

道の駅ぽんまる開発手順書 ・ 第1回

#1 領域選定 — 「集めたくなるもの」の条件を先に決める

「道の駅ぽんまる」は、訪れた道の駅に判を押していく記録アプリです。2026年8月12日にApp Storeでリリースしました。

このシリーズでは、企画から審査通過・リリースまでの過程を、あとから誰かが再現できる手順書として公開します。第1回は、そもそも何を作るかを決めた手順です。

目的

1本目に作るアプリを決めることでした。ただし、狙いは売上ではありません。

コードを書けない人間が、証明書・署名・ビルド・審査を回してストアに並べられるか。

ここが通らなければ、その先の計画が全部成立しない。だから1本目は「売れるか」ではなく「出せるか」を検証するための題材として選ぶ、と最初に決めました。

とはいえ、どうせ出すなら人が使うものにしたい。そこで「出しやすさ」と「需要の実在」を両方満たす領域を探しました。

手順

1. カテゴリごとの実数を取る

App Storeの公開検索API(iTunes Search API)で、候補カテゴリごとにアプリを取得しました。country=jp / entity=software で、評価数・平均評価・最終更新日・価格・提供者を集めます。

ここで大事なのは、このAPIは検索ボリューム(何人が検索したか)を返さないことです。分かるのは「そのキーワードにどんなアプリがあり、どれだけ評価が付いているか」まで。

なので、こう読み替えました。

評価0のアプリばかり並ぶキーワード = そのキーワードで客が動いていない。

2. 「個人開発が生きている」レンジを探す

集めた数字を眺めて、いちばん濃かったのが「訪れた場所を集める」系でした。評価1,000〜11,000件のレンジに、個人・小規模の開発者が11本ひしめいていました。

大手が総取りしているわけでも、誰もいないわけでもない。個人が数千件の評価を取れている実例がある領域です。

3. 成立条件を言語化する

なぜこの領域で個人が生きているのかを考えて、条件を3つに整理しました。

条件理由
対象が固定されている対象が動かない = データ保守が最小で済む
数が多い集める動機が生まれる(道の駅は1,231駅)
全部埋めたくなる制覇欲が継続利用の燃料になる

この3つ目を満たすかどうかが分かれ目でした。実際、美術館・展示の記録アプリはほとんど存在しません。会期があって対象が動くため、1つ目の条件を満たさないからだと考えています。

4. 却下した候補を記録する

「水族館」「動物園」も候補でしたが、実数を見て却下しました。

「水族館」で検索して上位に出るのは、10万件超の評価を持つ育成ゲームです。実在の水族館を記録するアプリは上位に1本もありません。作っても検索でゲームに埋もれます。

キーワードが別ジャンルに占有されている領域には入らない。

5. レビューを読んで、勝ち筋があるか確かめる

道の駅に絞って調べると、競合は7本ありました。想定より多い。上位2本は評価3,000件台です。

ここで諦めず、レビュー186件を読みました。すると、上位でも品質評価が割れていることが分かりました。最大手の1本は、**★1が24%**を占めていました。

★1の中身を分類すると、不満は機能不足ではありませんでした。

★1の主な原因新規参入者が最初から解決できるか
データが消える(再インストールで記録が全部消えた、という報告が複数)できる
アプリが固まって記録できないできる
全画面広告・閉じられない広告できる(最初から入れなければいい)
iPhoneだけ機能が足りないできる(iOS専用で作る)
施設情報が古い・新駅が未登録できない(保守が要る。ここでは戦わない)

読み取れたのは、こういう配置でした。

既存の強み(情報の網羅性・鮮度)は保守コストが高い。 既存の弱点(安定性・作法)は、新規参入者が初日から解決できる。

情報量では勝たない。安定性と作法で勝つ、と決めました。

つまずいた点

「空いている市場」を探そうとして時間を溶かしかけました。

競合7本という数字を見た時点で、一度は「混みすぎている」と判断しかけています。ですが、空いている市場は、たいてい客もいない市場です。実際、候補に挙がっていた別テーマは「競合ほぼゼロ」でしたが、同時に「評価0のアプリが67%」で、客が動いていませんでした。

判断基準をこう変えました。

競合の数ではなく、競合の★1を読む。 埋まっているのが「席」なのか「不満」なのかで、入る価値がまったく違う。

成果物

道の駅アプリを1本目に決め、方針が3つ確定しました。

  1. 「記録が絶対に消えない」を唯一にして最大の売りにする — 最大の★1原因への直接の回答
  2. v1.0は広告なし・課金なし — 目的は審査を通すこと。審査項目を増やす要素は入れない
  3. 情報の網羅では戦わない — 施設の詳細情報(温泉・トイレ・EV充電)は持たない。保守が発生するものを抱えない

同時に、期待値も正直に書き残しました。この1本で大きな売上には届かない可能性が高い。上位2本が3,000件台の領域で、現実的に狙えるのは数百〜1,000件の水準です。それでも進めたのは、1本目の目的が売上ではなかったからです。

次回は、その道の駅データをどこから持ってくるかの話です。ここで**「商用可」と書かれたデータの落とし穴**を踏みかけました。

→ #2 データの調達 — 「商用可」の裏にあった非商用の但し書き


この手順書の「実物」版

ここまでの記録は物語として書いています。実際に使ったファイルそのものは、有料記事にまとめました。

  • 審査に通った設定ファイルの全文(package.json / app.json / eas.json / ストア文言)
  • 審査メモの全文と、却下への返信文の型
  • リジェクト4回の全記録(何が届いて、本当の原因は何で、どう直したか)
  • つまずき67件の逆引き表(症状 → 原因 → 対処)
  • 提出前チェックリスト

稼ぎ方は書いていません。 2026年9月8日時点のダウンロードは、道の駅ぽんまるが公開26日で36件、とじまるが6日で7件です。売れる方法は、まだ分かっていません。

→ Windows1台・コード0行でiOSアプリを2本App Storeに出した全記録|審査4回リジェクトの原文と、通った設定ファイル(3,980円・Brain)

同じ記事を note でも同じ価格で出しています。安い経路はありません。

#道の駅ぽんまる #市場調査 #個人開発