道の駅ぽんまる開発手順書 ・ 第2回
#2 データの調達 — 「商用可」の裏にあった非商用の但し書き
前回で、道の駅の記録アプリを作ると決めました。次に必要なのは、全国1,231駅のデータです。
この回は、実装より先にライセンスを確認して正解だったという話です。
目的
アプリに同梱する道の駅データを、商用利用が明確に許される経路で調達することでした。
無料アプリであっても、収益化の可能性を残す以上は商用利用にあたると考えて進めています。あとから「そのデータは使えない」となれば、作り直しでは済まず、公開停止もありえます。ここは推測で進めないと決めました。
手順
1. 候補を洗い出す
道の駅の一覧データには、少なくとも3つの経路がありました。
- 国土数値情報の「道の駅データ」
- 第三者が公開しているCC BY 4.0のデータセット(1,231駅)
- 国土交通省の公式サイトにある「道の駅一覧」
一見すると、2番がいちばん扱いやすく見えます。CC BY 4.0は出典表示さえすれば商用利用できる、明快なライセンスだからです。
2. 規約を「本文だけ」で判断しない
ここが今回の肝でした。1番の国土数値情報を確認したところ、こうなっていました。
| 見た場所 | 書かれていたこと |
|---|---|
| 利用規約 第1条 | 商用利用は可 |
| 同じ規約内の別条項 | 個別ページの「利用制限」欄に別の規約がある場合は、そちらに従う |
| 道の駅データの個別ページ | 「非商用」と明記 |
規約本文だけを読んでいたら「商用可」と判断していました。 実際には、個別ページの条件が優先されます。
さらに、このデータは最新版が2018年度版でした。古い。
3. 「他人のライセンス判断」に乗らない
では2番のCC BY 4.0のデータセットはどうか。説明を読むと、**「国土数値情報を基本とし」**と明記されていました。
つまり、非商用と書かれたデータを元に、CC BY 4.0として再配布されている構図です。この再ライセンスが有効かどうかは、こちらでは判断できません。
決めたのはこうです。
他人のライセンス判断に、自分の事業を乗せない。
法的に黒だと断定したわけではありません。判断がつかないものを避けただけです。個人開発で法務の相談先を持たない以上、グレーを踏まないことがいちばん安いリスク管理でした。
4. 公式の一次情報に切り替える
3番の国土交通省の公式「道の駅一覧」を確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収録数 | 1,231駅 |
| 形式 | Excel(駅名・登録回・登録年月・所在地) |
| ライセンス | 政府標準利用規約(商用可・出典表示が条件) |
| 鮮度 | 国土数値情報の2018年度版より7年分新しい |
商用可で、出典を書けば使える。しかも新しい。ただし座標(緯度・経度)が入っていません。
5. 足りない列を、別の公式データで補う
座標は、国土地理院のジオコーディングで住所から起こしました。こちらも無料・商用可です。
最終的な構成はこうなりました。
国交省の公式Excel(駅名・登録回・登録年月・所在地)+ 国土地理院のジオコーディング(座標)で、自前のデータセットを構築する。出典を明記する。
6. 出典表示を実装に落とす
政府標準利用規約の条件は出典表示です。これをアプリ内の設定画面に入れました。あわせて、本アプリが国土交通省とは関係がない旨も明記しています。公式と誤認されないためです。
「道の駅」の公式ロゴおよびシンボルマークは使っていません。データの利用許諾と、商標の利用許諾は別物だからです。
つまずいた点
「商用可」という4文字を見た時点で、確認を終えかけました。
規約本文の第1条に商用可と書いてあれば、普通はそこで読むのをやめます。実際には同じ規約の中に「個別ページの記載が優先される」という条項があり、個別ページには非商用と書かれていました。
学んだのはこれです。
オープンデータのライセンスは、規約本文とデータ個別ページの両方を読む。 条件が食い違っていたら、厳しい方が生きていると考える。
もうひとつ。データの調達を設計より先に済ませたのも結果的に正解でした。もし画面を作ってからライセンス問題に気づいていたら、データ構造ごと作り直しになっていた可能性があります。
成果物
- 商用利用が明確な経路で、1,231駅のデータセットを自前で構築
- 出典表示をアプリ内に実装(国交省・国土地理院)
- 既存アプリのレビューにあった「新駅がまだ登録されていない」という不満に対して、初めから新しいデータで立てた
副次的な効果もありました。データを静的にアプリへ同梱する構成にしたことで、サーバーが要らなくなりました。これが後の「通信ゼロ・オフライン完結」につながり、審査でのプライバシー申告も「データの収集なし」で通っています。
次回は、いよいよ実機です。Windowsだけで、1円も払わずにiPhone実機でアプリを動かすまでの手順を書きます。
→ #3 WindowsだけでiPhone実機まで — 0円で確かめる
この手順書の「実物」版
ここまでの記録は物語として書いています。実際に使ったファイルそのものは、有料記事にまとめました。
- 審査に通った設定ファイルの全文(
package.json/app.json/eas.json/ ストア文言) - 審査メモの全文と、却下への返信文の型
- リジェクト4回の全記録(何が届いて、本当の原因は何で、どう直したか)
- つまずき67件の逆引き表(症状 → 原因 → 対処)
- 提出前チェックリスト
稼ぎ方は書いていません。 2026年9月8日時点のダウンロードは、道の駅ぽんまるが公開26日で36件、とじまるが6日で7件です。売れる方法は、まだ分かっていません。
→ Windows1台・コード0行でiOSアプリを2本App Storeに出した全記録|審査4回リジェクトの原文と、通った設定ファイル(3,980円・Brain)
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