ぽんまるスタジオ

とじまる開発手順書 ・ 第4回

手順書 とじまる

#4 ビジネスモデルを審査で否定された日(ガイドライン3.2.2)

前回までで設計が固まり、実装を終えて審査に出しました。

そこから3回落ちています。 この回は、そのうち最も重い1回——企画の根幹を否定された話です。

目的

審査を通し、リリースすること。当時のコンセプトはこうでした。

自分で決めた時間を、自分で守る。破るなら、その分だけ払う。

ロック中に解除したくなったら「解除料」を払う。守れれば無料。これが企画の中心であり、収益モデルでもありました。

手順

1回目の却下:自動判定と、バイナリの事実が食い違った

提出の翌日、自動メッセージで却下されました。

Screen Time API を使っているのに、Family Controls entitlement なしで提出されている

第2回で申請したはずのものです。ここで反射的に再ビルドしませんでした。

代わりにやったのは、提出したファイルそのものの検査です。アップロードしたIPAをダウンロードし、署名を調べました。

検査項目結果
本体とExtension 3本の entitlement4つすべてに family-controls = true が焼き込まれていた
get-task-allowfalse(正しい配布ビルド)
ProvisionedDevicesなし(正しい配布ビルド)
プロビジョニングプロファイル4本family-controls が入っている

つまり、Appleの自動判定はバイナリの事実と食い違っていました。 作り直しても同じものができるだけです。

却下されたら、まず提出物そのものを検査する。 再ビルドはその後。 この検査はMacなしでできます。

そのうえで、原因の仮説を2つ立てました。

仮説対応
A: アカウントに配布用の承認が下りていない申請フォームを出す
B: Appleの自動解析の誤検知返信して再チェックを依頼

片方ずつ試すと、外したときに数日〜数週間ロスします。 承認待ちはこの案件で唯一読めない外部依存だったので、両方同時に打ちました。申請は、承認済みなら無視されるだけで害がありません。

2回目の指摘:企画の根幹を否定される

返信の直後、今度は人間の審査官から指摘が来ました。

Guideline 3.2.2 - Business - Other Business Model Issues 個人の目標を達成できなかったときにユーザーへ課金する機能は、App Store にふさわしくない。

「破るなら、その分だけ払う」が、そのまま禁止事項でした。

争わないと決める

反論の材料はありました。

  1. 待てば無料になる(強制的に取られるわけではない)
  2. 開始前に金額を提示している
  3. 1日の上限をユーザー自身が設定できる
  4. 先行事例がある(「寄付してブロック解除」で配信中の競合が実在した)

さらに、こちら側の文言の問題である可能性も残っていました。サブタイトルが「守れたら無料。破った分だけ払う」、用語が「解除料」。自分でペナルティとして売り込んでいたわけです。

それでも、争わないことを選びました。

理由は時間です。Appleの文面は断定的で、勝率は高く見積もっても数割。外したときに1週間単位で溶けます。半年で成果を出すという目標に対して、審査の往復に賭ける価値がないと判断しました。

収益モデルを作り直す

案判定
買い切り(非消耗型)¥370採用。 商品作成が1件で済み、購入画面の法定表示が不要。サブスクより1〜2日早く出せる
サブスク見送り。 継続収益として本命だが、購入画面に価格・期間・自動更新の明示と規約リンクが必須で、欠けるとそれ自体で却下される。いま背負うリスクではない
前払いチケット却下。 ペナルティではないが「無料で試せない」。競合の課金不満の多くがこの型
投げ銭却下。 収益がほぼゼロで、目標と噛み合わない

重要なのは、新機能を作らなかったことです。既にある機能に線を引いただけで有料版を作りました。却下から復帰するときに機能を足すと、そこで新しいバグと新しい審査項目が生まれます。

ティア名は Pro ではなく Plus にしました。上級プランを後から足す前提で、無料 → Plus → Pro の梯子を残すためです。

つまずいた点

3回目の却下:メタデータは2ページに分かれていた

作り直して再提出し、また落ちました。 指摘は3つです。

ガイドライン指摘真因
5.1.1(iv)権限を求める前の自前画面のボタンが「許可する」。システムの許可ダイアログと紛らわしいアプリ内のボタン文言
2.3.7サブタイトルに価格への言及がある。「無料」も価格参照とみなされるサブタイトルが旧版のまま残っていた
3.2.2(再)サブタイトルが「破ったら払う」を示唆し続けている同上

原因は単純でした。App Store Connect のメタデータは2ページに分かれています。

  • バージョンページ(概要・プロモーション用テキスト・スクリーンショット)
  • アプリ情報ページ(アプリ名・サブタイトル・カテゴリ)

再提出のときにバージョンページは全面改訂したのですが、アプリ情報ページは別画面で、そこの更新が漏れていました。 結果、削除したはずの「破った分だけ払う」がサブタイトルに残り、中身ではなく文言を根拠に3.2.2を再指摘されたわけです。

得た一般則は3つです。

  1. メタデータは2ページに分かれている。片方だけ直して安心しない。 文言を変えるときは設定ファイルを正として、両ページを突き合わせる
  2. 2.3.7 の線引き: サブタイトルやプロモーションテキストに、価格・無料・割引の言及は不可。説明欄だけは明示的に許容されている
  3. 5.1.1(iv) の線引き: システムの許可ダイアログの前に挟む自前画面のボタンに「許可する」を使わない。「続行」にする

好材料もあった

3回目の3.2.2は、サブタイトルだけを根拠にしていました。これは裏を返せば、バイナリ側の罰金機能の削除は受け入れられた可能性が高いということです。

5.1.1(iv) も 2.3.7 も、機械的に直る種類の指摘です。設計への異議はもう残っていません。

成果物(と、まだ出ていない結果)

  • 収益モデルを**買い切り ¥370「とじまる Plus」**へ転換
  • 却下時の初動を「再ビルド」から「提出物の検査」に変更
  • メタデータの2ページ問題という、次のアプリでも効く知識

この記事を書いた時点で、とじまるはまだリリースできていませんでした。3回目の指摘に対応して、再提出の準備をしているところでした。

このシリーズは、うまくいった手順だけを並べるつもりがありません。通ってから書くと、落ちた過程が消えます。 だからこの回は、結果が出る前に書きました。

追記(2026年9月): 3回目の指摘に対応して再提出したところ審査を通過し、App Storeで配信を始めました。 通過までの最後の対応は次回に書きます。 → App Storeで見る

→ とじまるの紹介ページはこちら


この手順書の「実物」版

ここまでの記録は物語として書いています。実際に使ったファイルそのものは、有料記事にまとめました。

  • 審査に通った設定ファイルの全文(package.json / app.json / eas.json / ストア文言)
  • 審査メモの全文と、却下への返信文の型
  • リジェクト4回の全記録(何が届いて、本当の原因は何で、どう直したか)
  • つまずき67件の逆引き表(症状 → 原因 → 対処)
  • 提出前チェックリスト

稼ぎ方は書いていません。 2026年9月8日時点のダウンロードは、道の駅ぽんまるが公開26日で36件、とじまるが6日で7件です。売れる方法は、まだ分かっていません。

→ Windows1台・コード0行でiOSアプリを2本App Storeに出した全記録|審査4回リジェクトの原文と、通った設定ファイル(3,980円・Brain)

同じ記事を note でも同じ価格で出しています。安い経路はありません。

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