とじまる開発手順書 ・ 第3回
#3 実機で競合を試したら、設計の前提が崩れた
前回で申請を出し、承認待ちの間に実装の設計を詰めていました。
その途中で、設計の前提が崩れました。 この回はその話です。
目的
とじまるの差別化の1本目は「穴の少なさ」でした(第1回)。競合の★1の24%が「効かない・バグ」だったので、そこを潰せば勝てる、という読みです。
そのために確かめる必要がありました。
iOSの設定アプリから権限を外されたとき、ロックを維持できるのか。
これができないと「穴の少なさ」を売りにできません。
手順
1. 「対策済み」の競合を、実機で試す
調査段階で、この分野でもっとも強力とされていた競合アプリがありました。レビューに 「権限解除対策済み」 と書かれています。
技術記事では「サードパーティのアプリはパスコード保護ができない」とされていたので、情報が食い違っていました。どちらが正しいのか。
実機に入れて、自分で試しました。
2. 結果:解けた
やったことは単純です。iOSの設定アプリを開いて、そのアプリのスクリーンタイム関連の権限を外す。
それだけでロックは解けました。
さらに、設定アプリ自体もシールド(ロック)されていませんでした。つまり、設定アプリへの導線は開いたままでした。
レビューにあった「権限解除対策済み」は、再現しませんでした。
3. 前提を書き換える
ここで選択肢は3つありました。
| 案 | 判定 |
|---|---|
| 設定アプリごとロックする | 却下。 最強と目していた競合すらやっていない。緊急時にアクセスできなくなる問題もあり、筋が悪い |
| 「絶対に解除できない」と謳う | 却下。 事実ではない。レビューで必ず暴かれる |
| 防げないことを前提に、設計を変える | 採用 |
決めた方針はこうです。
権限の剥奪を「防ぐ」のではなく、検知して「裏口解除」として記録する。
とじまるは「破れないアプリ」ではなく、「破ったことがなかったことにならないアプリ」になりました。
4. コンセプトと訴求を作り直す
設計が変われば、売り文句も変わります。
- スクリーンショットの3枚目に予定していた「抜け道を、ぜんぶ塞ぎました」→ 使わない
- 代わりに「ズルしても、なかったことにはなりません」
嘘をつかない範囲で言えることに、言い換えました。
つまずいた点
同じ論点で、3回訂正した
この件の本当の教訓はここです。競合の防御力について、3回判断を変えています。
| 回 | 判断 | 根拠 | 情報の種類 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 必ず突破される | 技術記事 | 二次情報 |
| 2回目 | この競合は封じている | レビュー | 伝聞 |
| 3回目 | 封じていなかった | 実機 | 一次情報 |
2回目でつまずいています。レビューに書いてあることを、事実として設計に取り込んでしまいました。
レビューは「そのユーザーがそう感じた」ことの記録であって、機能の仕様書ではありません。うまく解除できなかった人が「対策済み」と書くことは、普通に起こります。
得た一般則はこれです。
競合の能力判定は、実機を正とする。 レビューは需要と不満を読むためのもので、機能の有無を確定させるためのものではない。
「防げない」は、企画の死ではなかった
前提が崩れた瞬間は、正直「終わったかもしれない」と思いました。差別化の1本目が消えたためです。
ですが、整理すると残ったものがありました。
- 「効かない・バグ」への不満は、抜け道の話だけではない。タイマーが動かない、記録が消える、といった素の品質の話が多く含まれていた
- 防げないのは業界共通の制約。競合も同じ条件で戦っている
- 「破った記録が残る」は、誰もやっていなかった
結果として、差別化の2本目だった「記録が残ること」が1本目に繰り上がりました。企画は死なず、順位が入れ替わっただけでした。
成果物
- コンセプトを「塞ぐ」から「検知して記録する」へ改定
- 誇大表示を回避(審査・レビュー両面のリスクを下げた)
- 競合の能力判定は実機を正とする、という判断基準を獲得
そして、この「破ったら記録に残る」という設計が、次の回でもっと大きな問題を引き起こします。破ったときに料金を取る仕組みが、App Storeのガイドラインに引っかかりました。
この手順書の「実物」版
ここまでの記録は物語として書いています。実際に使ったファイルそのものは、有料記事にまとめました。
- 審査に通った設定ファイルの全文(
package.json/app.json/eas.json/ ストア文言) - 審査メモの全文と、却下への返信文の型
- リジェクト4回の全記録(何が届いて、本当の原因は何で、どう直したか)
- つまずき67件の逆引き表(症状 → 原因 → 対処)
- 提出前チェックリスト
稼ぎ方は書いていません。 2026年9月8日時点のダウンロードは、道の駅ぽんまるが公開26日で36件、とじまるが6日で7件です。売れる方法は、まだ分かっていません。
→ Windows1台・コード0行でiOSアプリを2本App Storeに出した全記録|審査4回リジェクトの原文と、通った設定ファイル(3,980円・Brain)
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